採択者インタビュー

池永富美子さんの写真
頑張る女性を応援したい。
働きたいと願う誰もが、
自分らしく働ける社会を目指して。

スタイルシフト株式会社
代表取締役
池永 富美子さん

頑張る女性を応援したい。
働きたいと願う誰もが、
自分らしく働ける社会を目指して。

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スタイルシフト株式会社
代表取締役
池永 富美子さん

時間の制約に縛られず、キャリアや経験を活かせる場を提供

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「いつでも、いつからでも、はたらくという選択肢を」という思いのもと、2018年に「スタイルシフト株式会社」を起業しました。企業と働く人とをつなぐマッチングサービス事業です。
現在は大きく分けて、「企業向け」と「個人向け」の両輪でサービス展開をしています。企業からは、プロジェクトや業務単位で仕事を切り出してもらい、チームを組んで請け負います。その内容は、営業事務やカスタマーサービス、事務局運営などさまざまです。

一方、個人向けは、時間的な制約からフルタイムで働くことができない人たちに、思い切り働ける場を「ワークシェア」というかたちで提供するサービスです。子育てや介護、通院や治療、パートナーの転勤などにより、想定外にキャリアが中断され、そのブランクに悩む人は数多くいらっしゃいます。
その時々のライフスタイルに合わせて、柔軟に働く時間や働き方を変えながら仕事を続けていけたら理想的です。しかし、フルタイムでないと、仕事の選択肢も内容の幅も一気に狭まります。スタイルシフトでは、それぞれが働ける時間を持ち寄りながら、ご自身が持っている経験やキャリアを活かしてチームとして働ける場を提供し、企業とつないでいくことに取り組んでいます。

人生の転機は、思いがけないキャリアの中断

わたし自身、子育てに専念していた時期を経て、いまに至ります。大学卒業後は銀行に勤め、そこで7年過ごしたころ結婚が決まりましたが、パートナーは海外赴任に。結婚後も別居しながら働き続けるか、仕事を辞めて渡航するか、ずいぶん悩みました。でも、当時30歳という年齢や、赴任期間の長さなど複数の要素を考え合わせ、一旦仕事を辞めることにしたのです。結果的に、海外で過ごしているあいだに2人の子どもに恵まれ、専業主婦として子育てに奮闘する日々を過ごしていました。
帰国したのは6年後、娘は5歳、息子は1歳でした。そこからすぐに仕事復帰という感じではありませんでした。子どもたちが日本のくらしになじむまでには時間がかかりましたし、その後は入学準備もありました。下の子もまだまだ小さかったですから、最初の1〜2年はバタバタと過ぎていった気がします。

働きたい気持ちだけでは、働けない社会のしくみ

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いずれ復帰をするつもりで子育てのかたわら勉強は続けていましたが、働いていない時間がどんどん長くなっていくことに、どこか不安を感じていたのだと思います。この気持ちをなにかの形につなげたいと、起業や政治提言、市民活動を目指す人が学び合う政策学校に入ったことが、ひとつの転機となりました。そこで同じように考える仲間たちと集い合い、女性の働き方について考えを深めるワークショップや勉強会などを地域で開くようになったのです。

そうした活動のなかで、キャリアブランクに直面する女性の声を聞く機会が増えていきました。離職してからの期間が長いと、みなさん自分の能力を過小評価しがちになるようで、「自分なんて、もう外で働くことは無理だから」とおっしゃるのです。「いまさら仕事なんてできるのかしら——」と。でも、しっかりとした職歴があり、実力も経験もある方ですらそうでした。時間の制約があるだけで、キャリアを活かしきれる場があまりにも少ないのだと感じました。

起業というハードルを、「ちふれ女性起業家支援制度」で乗り越えて

起業を考え始めたのは、女性の働き方支援を地域活動として4年ほど続けたころです。そのままでもやりがいは十分ありましたが、やはりボランティアには限界があります。そう思っていたとき、この「ちふれ女性起業家支援制度(以下、支援制度)」を知りました。
ちふれ化粧品のことは知っていましたが、このような制度があったことは初耳でしたし、女性に対しての理解やサポートという意味でも信頼できると感じました。そこで、地域活動で出会い、大学の同窓生でもある友人と一緒に、自分たちのアイデアに磨きをかけ、整える機会にしようと事業計画書を作り、連名で申し込んだのです。

起業というと、それだけでハードルの高さを感じると思います。わたしもそうでした。でも、わからないことは相談できましたし、応援してくれる存在というのは大きな支えになりました。この支援制度のおかげで、背中を押してもらえたというのは確かです。
例えば、税理士選びひとつをとっても、ツテがある専業主婦はなかなかいません。支援制度の採択後は、紹介いただいた税理士の方から起業にあたっての研修も受けました。プロの視点で、失敗を防ぐ方法や具体的な事例なども教えていただき、安心感がありました。

孤独な経営者に伴走してくれる、ちふれの存在

起業だけに終わらず、事業を続けていくうえでも心強く感じています。事業が走り出すと、営業をして仕事をいただいて……と、日々の業務をどう回していくかばかりに気を取られてしまいがちですが、どう運営していくかも大切です。ちふれさんには半年に一度、報告書を提出しますので、それが経営を見つめ直し、原点に立ち返る良い機会にもなっています。
経営者というのは、とても孤独です。ですから、現状やこれからについて、親身に相談にのってもらえるのは、ほんとうにありがたいです。伴走者のような存在ですね。このコロナ禍でも様子を気にかけていただき、ほっとしたのを覚えています。

実は、友人と共同で申し込んだこの支援制度でしたが、最終面接を前に彼女は病気で他界してしまいました。採択のご連絡をいただいたときは、うれしい反面、ひとりでやっていけるか悩みましたし、不安もありました。でも、彼女がすごく楽しみにしていたことですし、ちふれさんが一緒に歩んでくださることで、踏み出す勇気を得られたと思います。

仕事を通じて社会に投げかけたいことを、じっくり磨きあげる

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起業そのものは、プロセスさえ踏めばできることです。大切なのは、なぜ自分はこれをやりたいのか、まずその想いを一生懸命磨きあげ、そこに揺るがない信念を持つことではないでしょうか。それがあれば、きっと大変さもやりがいになっていくはずです。

仕事からしばらく離れていると、どこかもやもやしているけれど、自分が何をやりたいか明確にはわからないという人も多いです。でも、たまたまわたしがご提案した仕事がきっかけで、自分の強みに気づいたり、次にもっとやりたいことが見つかったりもします。それをもっと掘り下げて資格を取ったり、次のキャリアを目指したりという方もいらっしゃいました。
そうやって働く楽しさや意義を見つけ、「わたしなんて」と自信をなくしていた方が、自分で動き出していく様子を見ることができるのは心からうれしいですし、なによりのやりがいだと感じています。
時間的な制約でキャリアを中断されたり、ひとつのところに長く勤めることだけが良しとされたりするのではなく、働き方の選択肢が豊富にあり、雇用の流動性が高い社会が理想です。働きたいと願う人が、そう願ったときに自由に働ける世の中になるよう、この事業を通じて貢献していきたいです。

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