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お知らせ

皮膚の光老化に対するリンゴポリフェノールの作用 「Cyr61発現抑制剤」に関する特許取得のお知らせ

技術・研究開発

2019/05/23

ちふれホールディングス株式会社(本社:埼玉県川越市、代表取締役社長:片岡 方和)は、かねてよりリンゴポリフェノール(AP)の皮膚に対する抗光老化効果の研究に力を入れておりました。その研究成果の一部を「Cyr61発現抑制剤」として特許出願しておりましたが、この度、2019年3月29日に特許査定(特許番号:第6502636号)を受けたことをご報告いたします。

■皮膚の光老化について

シワの形成を促進する要因は、加齢はもちろんのこと、乾燥や太陽光にさらされることも大きな要因の一つです。加齢に伴って細胞の代謝機能が衰えることで進行する老化を自然老化(生理的老化あるいは内因性老化)と呼ぶのに対して、太陽光を何度も長時間にわたって浴び続けることによって引き起こされる皮膚老化を光老化と呼びます。光老化した皮膚は、シワやたるみが目立つようになります。太陽光、特に紫外線を浴びると、表皮細胞や線維芽細胞が持つDNAに傷がついたり、活性酸素種(ROS。以下、ROSとする)が過剰に生成したりします。このROSにより、タンパク質や脂質等が酸化して本来の機能が失われると、シワやたるみが生じるきっかけとなります。このROSを消去する抗酸化剤が有用であると考えられており、紫外線が肌にあたった影響を最小限にとどめる方法の一つとして、食品分野ではいち早く健康食品等で抗酸化剤が注目されてきました。

■リンゴポリフェノールに関する弊社の研究について

弊社は抗酸化試験を実施し、多くの抗酸化剤の中からリンゴ幼果(図1)から抽出されたリンゴポリフェノール(AP 。以下、APとする)を見出しました。このAPはビタミンCやカテキンといったよく知られている抗酸化剤にも引けを取らない非常に優れた抗酸化力を持っています。しかし、化粧品としてリンゴから得られるポリフェノールを肌に塗るとどのような効果が期待できるのかについては、ほとんど知られていなかったことから、その効果について検討することにいたしました。
リンゴ幼果
紫外線はUVAとUVB、そしてオゾン層で吸収されて地表には届かないUVCに分けられます。UVAは真皮層まで透過するため、線維芽細胞のコラーゲンを作り出す能力が低下したり、コラーゲン分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を多く産生するようになり、コラーゲンの量も質も変えてしまいます。真皮層には肌のハリや弾力の源であるコラーゲン等が多く存在することから、UVAが真皮層に届くことで、新たにシワができたり元々あったシワがより深くなってしまうことがあります。一方、UVBの大半は表皮層までしか透過しませんが、肌に大きな影響を与えることから、表皮層にUVBがあたった際にも真皮層にある線維芽細胞を刺激し、シワ形成を進行させると考えました。そこで上記の仮説を実証するために、試験を行いました。

■リンゴポリフェノールに関する弊社の試験について

まず、表皮細胞にUVBを照射して生成されたROS量を調べました。その結果、UVBによって細胞内ROS量は上昇し、APはその上昇を軽減させる効果があることがわかりました(図2)。次に、表皮へのUVB照射が線維芽細胞に及ぼす影響を調べるために、UVB照射処理後の表皮細胞の培養液を線維芽細胞に作用させて、線維芽細胞が分泌する情報伝達物質の一つであるCyr61の発現量を調べました。コラーゲン産生抑制因子であるCyr61の発現量が増加すると、線維芽細胞がコラーゲンの合成を抑制します。そこで、あわせてI型コラーゲンα1鎖をコードする遺伝子であるCOL1A1のmRNA量についても確認しました。その結果、UVBを照射された表皮細胞の培養上清で培養された線維芽細胞のCyr61発現量は著しく増加しました(図3)。またコラーゲンを分解するMMP-1量も増加しました。さらに、この時のCOL1A1 mRNA量はUVB照射の影響で減少したことから、Cyr61の発現量とCOL1A1 mRNA量は確かに連動していました(図4)。この一連の現象に対してAPを作用させると、Cyr61量の増加が抑制され、さらにCOL1A1 mRNA量の減少も抑制されることが確認できました。 
図2 APのROS生成抑制効果、図3 APのMMP-1及びCyr61の産生抑制効果、図4 APのCOL1A1 mRNAの発現調節効果

以上の試験結果をまとめると、APはその高い抗酸化力で、紫外線があたることで肌内部で生成されるROSを消去し、既に作られたコラーゲンが分解されてしまったり、新たにコラーゲンが生み出される頻度が減ってしまうことを軽減させる効果を持つことがわかりました(図5)。紫外線から肌を守るには、衣服や帽子、日傘等の他、日焼け止めによる物理的な防御方法があり、環境省も推奨する非常に大切なケア方法です。今回の研究成果では、紫外線を浴びてしまったとしても、肌が受けるダメージを最小限に抑えるという薬理的なケアの可能性をAPに期待できるものと考えており、この研究成果を製品に応用する取り組みを進めてまいります。
図5 APのシワ形成の進行に対する作用メカニズム(イメージ)

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