肌がくすんで見えがちな蛍光灯の明かりでも肌が輝く『オウニパウダー』の開発

日本の伝統色のひとつである「オウニ（黄丹）色」。ちふれホールディングスの綜合研究所では天然色素を原料に、その色を実現した「オウニパウダー」の開発に成功。蛍光灯下でも自然光の下と同じように肌を演出するメイクアップ商品に応用しています。

「オウニ」という色の名前を聞いたことがあるでしょうか？　漢字では「黄丹」と書きます。クチナシとベニバナを原料に染めた朱色に近いオレンジのようなその色は、日本では古来より高貴な色とされてきました。1998年に綜合研究所では、この「オウニ色」を実現する天然色素の粉体加工技術を確立し、化粧品への応用に成功、後に特許を取得しました。「オウニパウダー」と名付けたその原料は現在、当グループの商品に活用しています。

当グループの「オウニパウダー」を用いたメイクアップ商品の特長は、肌がくすんで見えがちな蛍光灯の明かりの下でも、明るく鮮やかで、生き生きとした健康的な肌を演出できるところです。その理由は、「オウニパウダー」に含まれるクチナシ色素パウダーとベニバナ色素パウダーの光学的な特性にあります。

「オウニパウダー」の開発とメイクアップ商品への応用研究がスタートしたのは1990年代半ば。当時の当社研究員が、天然色素の粉体メーカーに務めていた研究者から、天然色素パウダーについて詳細に教えられたことがきっかけでした。通常、ファンデーションなどの素材に使われる着色剤は、無機顔料を主原料とし、コストが高く不安定な天然色素は添加成分とするのが一般的です。

一方、天然色素であるクチナシやベニバナには、無機顔料にはない「蛍光特性」がありました。「蛍光特性」とは、「光のある領域の色を吸収して、他の領域の光に変化させて放出する性質」のことを指します。人は自然光や蛍光灯などの光がなくては、身の回りの物体を視認することができません。光には、人間が感知できない紫外線から赤外線までの間に、可視光領域として、紫〜青〜緑〜黄〜橙〜赤までのさまざまな色があります。
自然の太陽光は、黄から赤までの波長の領域が多いのに対して、蛍光灯の光は紫から緑の波長の成分を多く含んでいます。そのため、自然光の下にいるときより、蛍光灯の下にいるときのほうが、肌の色が青く、くすんで見えるとされています。

また、天然色素であるクチナシに含まれる黄色色素は、青色領域の光を吸収し、緑色の光を放出する性質を持っています。一方、ベニバナの赤色素は、緑色領域の光を吸収し、橙〜赤の光を放出する性質を持っています。この２つの天然色素の蛍光特性を活かすことで、蛍光灯下で青くくすんで見える肌の色を、自然光のもとで見るような健康的な色に演出できないか、というアイディアが生まれました。

この研究の結果、1996年、まず初めに商品化されたのが、ベニバナ色素パウダーを採用したメイクアップ商品でした。天然色素パウダーの光学的特性を、化粧品へと応用する研究はその後もさらに進展し、粉体メーカーの研究所の協力のもとで、数々の試作品を作っては評価試験を繰り返していきました。

そうして翌年の1997年、完成したのが当社オリジナルの「オウニパウダー」です。オウニパウダーは、従来、単品の色素として配合していたベニバナ色素とクチナシ色素を、表面処理することで一つの粉体にしたものです。これにより、ベニバナとクチナシを組み合わせたときの蛍光特性の強さを、従来品よりも2.2倍に強化できることがわかりました。
蛍光灯下のような赤や橙の光成分が少ない環境でも、「オウニパウダー」を配合したメイクアップ商品が光学的に明るく健康的な色を実現できるかどうかを検証するため、厳密な測定機器による分析が行われました。その結果、明確な数値としても、効果があることが実証でき、発売前の官能評価によるモニターアンケートでも、多数の方から「肌のくすみが目に見えて違う」という評価を得ることができました。

当社が開発した「オウニパウダー」の粉体をメイクアップ商品に応用する技術と、その天然色素の相乗効果については、2009年10月に特許が認められました。天然色素のみを着色成分とする「オウニパウダー」を配合したメイクアップ商品は、1997年9月に発売開始され、現在もその後継シリーズを販売しています。

当社では現在、「オウニパウダー」を商標登録し、この技術を用いて、さらに肌を魅力的に演出するメイクアップ商品の開発を進めています。

＊オウニパウダー：シルク、クチナシ黄、ベニバナ赤（光補正成分）