異性化糖とグリチルリチン酸ジカリウムの組み合わせにより、敏感肌のかゆみやチクチクを緩和するメカニズムを解明
近年、明らかな疾患ではないものの、かゆみやチクチクなどの皮膚の不快感を感じる「敏感肌」に悩む人が増えています。この度、当社綜合研究所は、保湿効果があるとされる異性化糖(以下、SI)と、肌あれを防ぐ効果があるとされるグリチルリチン酸ジカリウム(以下、DPG)を組み合わせることで生じる、敏感肌の不快な症状を和らげる相補的な効果のメカニズムを明らかにしました。
バリア機能の低下と感覚神経の発現バランスの乱れ
かゆみやヒリヒリなどの不快感を感じやすい「敏感肌」は、肌表面の見た目は健康な肌とほとんど違いがないものの、皮膚のバリア機能(外部刺激や異物の侵入を防ぎ、皮膚内の水分蒸発を防ぐこと)が低下している状態と考えられます。
健康な肌を細胞レベルで解析すると、「タイトジャンクション」と呼ばれるバリア機能を司る構造体が細胞同士を強く結びつけ、しっかりとしたバリア層を形成しています。タイトジャンクションはジッパーのような構造をしており、細胞の隙間を縫って伸びる感覚神経が皮膚の表層まで伸びすぎないように剪定する役目も担っています。バリア機能が低下した敏感肌では、タイトジャンクションが弱まっているために剪定機能が働かず、感覚神経が表層近くまで過剰に伸び、さまざまな刺激に敏感に反応しやすい状態になっていると考えられています。
当社はこのバリア機能の低下と感覚神経の発現バランスの乱れに着目し、生物学的、物理学的に異性化糖(SI*2)とグリチルリチン酸ジカリウム(DPG*3)の単独・併用による効果を調べました。

*1 タイトジャンクション…皮膚の表皮層に存在し、皮膚の細胞同士を接着するジッパー構造のようなバリア構造体。皮膚バリア機能の恒常性維持に重要な役割を果たしています。
*2 異性化糖(SI)…トウモロコシなどの植物から抽出した糖を異性化して作られる保湿成分です。異性化糖は食品にも用いられていますが、研究で使用した異性化糖は食品添加物とは組成が異なり、NMF(天然保湿因子)に類似した組成を持つ複合物です。
皮膚に塗布され吸収された糖が角層の表面のタンパク質(ケラチン)に結合して、水分を保持するのに寄与します。
*3 グリチルリチン酸ジカリウム(DPG)…マメ科の甘草の根に含まれる成分を粗原料としてつくられる成分です。炎症を抑える、アレルギー反応を和らげる、皮膚刺激を緩和するなどの作用があり、医薬品の有効成分としても使われています。
健康な肌を細胞レベルで解析すると、「タイトジャンクション」と呼ばれるバリア機能を司る構造体が細胞同士を強く結びつけ、しっかりとしたバリア層を形成しています。タイトジャンクションはジッパーのような構造をしており、細胞の隙間を縫って伸びる感覚神経が皮膚の表層まで伸びすぎないように剪定する役目も担っています。バリア機能が低下した敏感肌では、タイトジャンクションが弱まっているために剪定機能が働かず、感覚神経が表層近くまで過剰に伸び、さまざまな刺激に敏感に反応しやすい状態になっていると考えられています。
当社はこのバリア機能の低下と感覚神経の発現バランスの乱れに着目し、生物学的、物理学的に異性化糖(SI*2)とグリチルリチン酸ジカリウム(DPG*3)の単独・併用による効果を調べました。

*1 タイトジャンクション…皮膚の表皮層に存在し、皮膚の細胞同士を接着するジッパー構造のようなバリア構造体。皮膚バリア機能の恒常性維持に重要な役割を果たしています。
*2 異性化糖(SI)…トウモロコシなどの植物から抽出した糖を異性化して作られる保湿成分です。異性化糖は食品にも用いられていますが、研究で使用した異性化糖は食品添加物とは組成が異なり、NMF(天然保湿因子)に類似した組成を持つ複合物です。
皮膚に塗布され吸収された糖が角層の表面のタンパク質(ケラチン)に結合して、水分を保持するのに寄与します。
*3 グリチルリチン酸ジカリウム(DPG)…マメ科の甘草の根に含まれる成分を粗原料としてつくられる成分です。炎症を抑える、アレルギー反応を和らげる、皮膚刺激を緩和するなどの作用があり、医薬品の有効成分としても使われています。
異性化糖とグリチルリチン酸ジカリウムの併用による効果
①遺伝子レベルで互いに補い合う効果
第一に、3つのタイトジャンクション関連因子(CLDN1、CLDN4、ZO-1)と、2つの神経伸長関連因子(Sema3A:神経の伸びを抑制する因子、NGF:神経の伸びを促進する因子)について、遺伝子発現がどのように変化するかを定量化しました。ヒスタミン(かゆみの原因となる物質)を添加した敏感肌モデルの細胞を作成し、効果を検証しました。敏感肌モデルではタイトジャンクション関連因子の遺伝子発現はいずれも低下し、神経伸長関連因子のうちNGFの遺伝子発現が大きく増加していることがわかりました。以上により、実際に敏感肌で起こっている現象を遺伝子レベルで表現することが出来ました。
この敏感肌モデルを用いてタイトジャンクション関連因子の変動を見ると、DPGはCLDN1、ZO-1に、SIはCLDN4に作用することがわかりました。またこれら2成分を併用した場合には、相補的に3つのタイトジャンクション関連因子の発現が上昇しました。これにより、2成分併用は単独使用よりも、より強固なタイトジャンクションが形成される可能性が示唆されました。
一方、2つの神経伸長関連因子については、健康な肌では神経の伸びを抑制するSema3Aと神経の伸びを促進するNGFがシーソーのようにバランスを保っています。敏感肌モデルを用いて神経伸長関連因子の遺伝子発現量の変化を見ると、Sema3AについてはDPG単独または2成分の併用で敏感肌モデルよりも高くなり、敏感肌モデルで高くなっていたNGFについては、SI、DPGそれぞれ単独でも抑えられ、併用するとより低く抑えられることが示されました(図1)。
=タイトジャンクション関連因子(バリア機能)の向上とともに、神経関連因子のバランスの制御が得られた。➁タンパク質発現量の向上
第二に、遺伝子発現の結果として作られるタンパク質の量を解析しました。ウェスタンブロッティングと呼ばれる方法(特定のタンパク質を検出する実験手法)で、3つのタイトジャンクション関連因子についてタンパク質の発現量を調べました。その結果、①の結果と同様に、それぞれ異なる因子についてタンパク質発現量の低下が抑制され、2成分を併用するとタンパク質発現量が相補的に増加しました(図2)。
=ヒスタミンを投与した敏感肌モデルではタンパク質の量が低下し、2成分を併用すると増加している。また、発現したタイトジャンクション関連タンパク質が細胞間に局在しているのかを、免疫染色法と呼ばれる方法(タンパク質が組織のどこに存在しているか、蛍光染色で観察する実験手法)で調べました。敏感肌モデルでは細胞間タンパク質の発現が低下していますが、2成分を組み合わせて添加した場合は、細胞間でのタンパク質の発現が増加していることが確認されました(図3)。
➂皮膚バリア機能の強化
第三に、実際に表皮細胞において、タイトジャンクションが強化されてバリア機能が向上しているのかどうかを物理学的に調べました。細胞同士の結びつきの強さを電気抵抗値として測定し、タイトジャンクションの強度を評価しました。SIおよびDPGを添加した場合について、経上皮電気抵抗(TEER)値を測定した結果、SIは添加後72時間で、DPGは24時間および48時間後で、TEER値が有意に上昇しました。2成分の併用では、24・48・72時間すべてのタイミングでTEER値が有意に上昇しました(図4・図5)。これらの結果から、SIとDPGの併用は細胞間の結合を強化し、物理的にも皮膚のバリア機能を高める可能性が示されました。

タイトジャンクションの強度が増し、バリア機能が向上するということは、例えるなら細胞間をつなぐジッパーが強くなり、外部からの有害物質の侵入や内部からの水分の蒸散などを防ぐ力が強くなったとイメージできます。タイトジャンクションの強化は感覚神経の剪定に関連することも知られているため、SIとDPGの併用は、バリア機能の向上だけでなく、ヒリヒリ、チクチクなど敏感肌の不快な症状の低減にも繋がると期待されます。
敏感肌の不快症状緩和へ
今回の研究により、植物由来保湿剤のSIと化粧品汎用成分であるDPGの新たな組み合わせが、敏感肌のバリア機能低下と神経過敏の双方に対して改善効果を発揮する可能性があることがわかりました。これは、過去に発表した「グリチルリチン酸ジカリウムとヘパリン類似物質の併用による炎症抑制および表皮バリア機能向上に関する効果の検証」に続く研究として、新しい成分の組み合わせの効果と、敏感肌の症状緩和のメカニズムを解明した研究成果です。今後もさらなる研究を通じ、日常使用する化粧品で、体調や環境の変化によってかゆみやチクチクを感じやすい敏感肌の方々にも使いやすいスキンケア技術の提供をめざしてまいります。
研究者の声
本研究成果は第35回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)カンヌ大会2025において発表いたしました。同学会を通じて、過剰な成分配合の肌への影響やシンプル処方の重要性を実感しました。不要な成分の配合を抑え、シンプル処方という方針を守りながら、既存の成分の機能性を解明することで、お客様のニーズに応えることができる製品開発に繋げていきたいと考えています。