ナイアシンアミドの新しい美白メカニズムを解明。
トラネキサム酸との併用により、メラニン生成を抑える効果を確認

この度、当社綜合研究所は、美白有効成分として知られるナイアシンアミド(以下、NA)の新たな美白作用機序を解明し、さらにトラネキサム酸(以下、TA)とNAの併用による有効性を確認しました。

ナイアシンアミドがメラニン合成を抑制

シミ・ソバカスの主な原因は「メラニン」と呼ばれる黒色色素です。メラニンは皮膚の基底層に存在するメラノサイトと呼ばれる細胞で、紫外線などの刺激に応答して合成が促進され、表皮のケラチノサイトへ排出されるというプロセスを辿りシミ・ソバカスとして見えるようになります。この「刺激応答」、「メラニン合成」、「メラニン排出」という3つのプロセスに対して最適な成分を選択して組み合わせることで、個人差のある多様な肌状態にアプローチできると考えられます。
一般的に知られる美白有効成分の中でも、TAは「刺激応答」の段階で働き、プラスミンという情報伝達物質の活性を抑制することによって、間接的に「メラニン合成」を抑えます。一方、NAはメラノソーム移送*1を阻害し、「メラニン排出」を防ぐことによって美白効果を示すことが知られています。当社は「メラニン合成」の段階に着目し、未解明だったNAのメカニズムについて研究を行いました。

*1 メラノソーム移送:メラニンを合成・貯蔵する細胞小器官であるメラノソームが細胞内膜で成熟化し、微小管輸送で細胞内を移動する一連の過程。

① メラニン合成関連酵素の発現量を抑制

メラニンはメラノサイト内部において、チロシナーゼなどの「メラニン合成関連酵素」の働きによって合成されます。この酵素の活性を阻害することでメラニン合成を抑えるメカニズムが一般的に知られていますが、本研究では、NAがチロシナーゼの発現量を抑制することでメラニンも減少するのではないかという仮説を立てました。
NAを添加したメラノサイトの遺伝子及びタンパク質解析を行いチロシナーゼへの影響を調べると、濃度依存的にチロシナーゼの発現が減少していることが確認され(図1)、NAが「メラニン合成」にもアプローチしているという可能性が示唆されました。
図1. チロシナーゼの酵素発現量変化 図1. チロシナーゼの酵素発現量変化

② ヒートショックプロテイン(HSP70)の発現を促進

さらに、チロシナーゼの発現減少の要因についても検証しました。チロシナーゼの発現にはMITFという転写促進因子*2が関係していますが、本研究でNAの添加はMITFの発現量に変化を与えないことが確認されました。
次に着目したのがヒートショックプロテイン*3の一種であるHSP70です。HSP70はMITFの活性を抑制することが報告されていますが、NAが肌においてHSP70に影響することは報告されていませんでした。そこで皮膚細胞でNAを添加してHSP70の遺伝子及びタンパク質の変動を検証したところ、メラノサイト内のHSP70発現が増加していることが確認されました。以上より、NAはメラノサイトにおいてHSP70の発現を増加させ、MITFの働きを妨げることによって、チロシナーゼの産生を減少させることが示されました(図2)。この結果、メラニンの合成を抑制すると考えられます。

*2 転写促進因子:酵素などの発現量を促進するように命令するタンパク質
*3 ヒートショックプロテイン:熱などの刺激から細胞を守る働きをもつタンパク質
図2. ヒートショックプロテイン70の発現量変化 図2. ヒートショックプロテイン70の発現量変化

③ ナイアシンアミドによりメラニン合成を抑制

実際に、ヒト由来細胞においてNAをメラノサイトに1週間作用させると、メラニン合成量が減少することを確認しました(図3)。
図3. メラノサイトにおけるメラニン合成の変化 図3. メラノサイトにおけるメラニン合成の変化

トラネキサム酸とナイアシンアミドの併用による相加的な美白効果

既に美白有効成分として知られているNAについて、本研究により、「NAがHSP70の発現を促進することでメラニン合成が抑制される」という新たな着眼点から有用性を見出すことができました。
新たに解明したNAのメカニズムを基に、さらに3D皮膚モデル*4を用いてTAとNAを併用した場合の試験を実施した結果、単独で添加した場合よりもメラニン合成の強い抑制が認められ(図4)、異なるメカニズムを持つ2成分のダブル美白効果(相加的なメラニン減少)を確認しました。

*4 3D皮膚モデル:メラノサイトとケラチノサイトを培養した、人の皮膚構造に近い細胞モデル
図4. 3D皮膚モデルにおけるメラニン合成の変化 図4. 3D皮膚モデルにおけるメラニン合成の変化

個人差のある多様な肌状態に対して様々な角度からアプローチ

シミ・シワのできる原因には個人差があります。「NAの新たな美白メカニズム」及び「刺激応答にアプローチするTAと、メラニン合成・メラニン排出にアプローチするNAのダブル美白効果」を示した本研究により、TAとNAの併用がシミ・ソバカスの発生プロセスに対して多角的にアプローチできることが示唆されました(図5)。
また、TAは肌あれに、NAは肌あれやシワに対しても既に有効性が確かめられている成分です。特定の成分が肌に合わないという悩みを持つ人や、美白以外に肌あれやシワなどの悩みを持つ人にも、最適な有効成分の選択かつ肌悩みに寄り添った化粧品の処方設計に繋がります。今後も、他成分との組み合わせなどによって、多様な肌悩みに新たな価値を提供できるような知見を獲得していく予定です。
図5. トラネキサム酸とナイアシンアミドによる美白アプローチ 図5. トラネキサム酸とナイアシンアミドによる美白アプローチ

研究者の声

本研究の2成分はいずれも医薬部外品の有効成分として多方面からの研究が盛んであるにも関わらず、さらなる未解明のメカニズムを発見できたのは貴重な研究成果です。成果を報告した第48回分子生物学会年会(2025年12月4日)、第3回化粧品技術者会学術大会(2025年12月9日)においても注目を集めました。「確かな科学的根拠に基づく処方設計の製品をお届けしたい」という思いを共有する研究員が総力を挙げてデータを導き出し、将来的に多くの製品に関連する根拠となる、当社独自の知見に結び付けることができました。

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