リンゴポリフェノールで酸化ストレスを軽減し、
皮膚の光老化を防御する

年齢を重ねると気になり出す言葉「老化」。中でも「光老化」という言葉をご存知でしょうか? 「老化」にも種類があり、太陽光、特に紫外線にさらされることで起こる皮膚の変化は「光老化」と呼ばれています。ちふれホールディングスの綜合研究所は、強い抗酸化力をもち、この「光老化」を防ぐ「リンゴポリフェノール」の機能とメカニズムの研究を行っています。

「光老化」をケアする素材を探す

「光老化」の防御とケアを行うことができれば、お客様の肌の悩みの解消につなげることができる——。そう考えた綜合研究所は、研究テーマを「光老化」としました。しかしながら、当時は、紫外線から肌を物理的に守る日やけ止めの製品を開発、販売するのみで、「光老化」ケアのための切り札となる「機能性素材」はありませんでした。そのため、「光老化」に関心の高い大学の研究室を探し、2013年7月1日に共同研究を立ち上げました。

その同時期に「リンゴポリフェノール」の抗老化力についての研究成果が原料メーカーより発表されました。原料メーカーの研究は主に機能性食品開発を目指したものであり、肌への機能性を調べたデータはまだ多くはなかったため、綜合研究所は「リンゴポリフェノール」の抗酸化力を確かめることにしました。結果、他の成分よりも抗酸化力が高いことがわかり、これは「光老化」を防ぐ素材として有用だと考え、「リンゴポリフェノール」の「光老化」の機能とメカニズムの研究を開始しました。

皮膚表面にダメージを与える紫外線に注目

綜合研究所が最初に注目したのは、肌に影響を与える紫外線の種類。皮膚に影響を与える紫外線は2種類あり、ひとつは皮膚の深部まで届くUVA。もうひとつは表面に近い層までしか届かないUVBです。UVAは肌のハリや深いしわ、たるみなどに関係し、UVBは肌表面が赤くなる日やけやシミ・ソバカスの原因になる紫外線です。

UVBのエネルギーはUVAの600~1000倍にもなることから、綜合研究所は、皮膚の深部まで届くUVAだけでなく、高エネルギーのUVBに曝される表皮層側からの影響もシワ形成に繋がるのではないかと考え、UVBに着目して「リンゴポリフェノール」の効果を調べることにしました。

前例の少ない研究のため、最初はとにかく実験の数をこなして結果を出そうとしていましたが、途中からは得られたデータを一つ一つ見直して、改善すべき点を顧みてから次の実験を考える方針に切り替えました。日々、大学と会社を行き来しながら試行錯誤を重ね、「リンゴポリフェノール」の抗シワ作用のメカニズムに迫っていきました。

細胞レベルでも肌のレベルでもシワ対策に効果

研究に用いたのは人工的に培養した表皮細胞です。この細胞にUVBを照射すると、細胞を老化させる活性酸素種(ROS)が発生しますが、「リンゴポリフェノール」が存在するとROSの発生が抑制されることがわかりました。さらに、肌のハリやシワに重要な働きをするコラーゲンを分解する酵素MMP-1やコラーゲン産生を抑制するCyr61という物質が作られるのを抑えることもわかりました。

これらの研究結果から、「リンゴポリフェノール」は、肌がUVBにさらされたときに、シワの原因となる物質を抑え、シワ対策に期待できることが細胞レベルで明らかになりました。

そこで次はモニター12名に、顔の半分に「リンゴポリフェノール」を配合した製剤を、もう半分には無配合の製剤を、目じり周辺に朝晩塗るという実験を3か月行っていただきました。どちらが「リンゴポリフェノール」入りかを知らされていないモニター12名の実験により、10例で「リンゴポリフェノール」を塗った側の目じりのシワが改善され、無配合の製剤を塗った側は改善が6例、悪化が4例という結果になりました。これは少人数の予備的な調査でしたが、「リンゴポリフェノール」を配合することで、実際に人の肌のシワが改善する可能性が示されました。

比較図比較図

肌のくすみへの効果も期待

また、皮膚表面の角層細胞を用いた実験も行いました。紫外線は皮膚に存在するタンパク質の酸化を引き起こします。酸化したタンパク質は本来の機能が発揮できず、肌のくすみや透明感の低下、角層の水分量の低下を起こすことが知られています。

角層細胞にUVBを照射すると、酸化したタンパク質「カルボニル化タンパク質」が増加しましたが、「リンゴポリフェノール」が存在するとカルボニル化タンパク質の増加が抑制されました。この効果は、ビタミンCよりも高いこともわかりました。

年齢とともに「カルボニル化タンパク質」が蓄積し、皮膚のくすみや保湿力の低下を引き起こすことがわかっていますが、そのメカニズムは不明でした。綜合研究所は、培養表皮細胞や表皮細胞を重層的に培養して皮膚を模した立体的モデル(表皮モデル)を用いた実験で、「カルボニル化タンパク質」が「トランスグルタミナーゼ1」という酵素の発現を減少させることで、くすみや皮膚バリア機能の低下を引き起こすことを突き止め、さらにその効果を「リンゴポリフェノール」が抑制することも示すことができました。

リンゴポリフェノールによる経皮水分蒸散量(TEWL)上昇抑制効果グラフ
この研究結果から、「リンゴポリフェノール」は保湿力アップやシワ・くすみ対策につながる製品への応用が期待できることがわかりました。日やけ止めや日傘などで紫外線から肌を守るだけでなく、すでに紫外線を浴びてしまったあとでも、肌が受けるダメージを最小限に抑えることができれば、スキンケアの可能性は広がっていきます。現在、綜合研究所では、これらの研究成果を製品に応用する取り組みを進めています。

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